このカフェの二階に上がると、まず感じるのは木に包まれるような静かな心地よさです。
床、壁、天井、そして小屋組みまで、杉の表情がやわらかく広がり、建物全体が呼吸しているような空気感があります。
この心地よさは、木の見た目や香りだけによるものではありません。
壁や屋根を何層にも重ね、そこに空気の通り道をつくることで、季節に合わせて熱を逃がしたり、暖かさを保ったりする仕組みが組み込まれています。
この建物の壁は、室内側から順に、70mmの土壁、40mmの通気層、45mmの杉板断熱層、45mmの通気層、そして24mmの焼杉外壁という五層構造になっています。
土壁は、急激な温度変化をやわらげ、湿気も穏やかに受け止めてくれる素材です。そこに杉板による断熱層と二つの通気層を重ねることで、外の暑さや寒さをそのまま室内に伝えにくくしています。
屋根も同じように、空気の動きを考えた構造になっています。
吹き抜けとなる屋根面は、45mmの杉板、105mmの通気層、45mmの杉板断熱層、30mmの通気層、45mmの杉板によって構成されています。つまり壁と同じ五層構造です。
日中、太陽の光で屋根や外壁が暖められると、その熱を受けた空気は通気層の中をゆっくりと上昇していきます。その上昇した空気の行き先となるのが、屋根の上部に設けた越屋根です。
越屋根にはガラリ窓が設けられています。
夏はこのガラリ窓を開けることで、壁や屋根の通気層を上がってきた熱気を建物の外へ排出します。熱が室内にこもりにくくなり、機械だけに頼らず、建物そのものが暑さをやわらげてくれます。
一方、冬はガラリ窓を閉じることで、暖められた空気を外へ逃がしすぎないようにします。
太陽によって温められた空気を建物の中にとどめ、土壁や木材がその暖かさをゆっくり受け止めることで、やさしい室内環境を保つ考え方です。
また、一階の床は外部の地面とつながる土間、三和土となっています。
安定した地面の温度を室内に伝え、さらに土壁がその穏やかさを受け止めることで、夏は涼しさを、冬は暖かさをゆっくり保ってくれます。
この建物は、断熱材や設備だけで室内環境をつくるのではなく、土、木、空気、太陽、そして地面の力を組み合わせながら、自然に寄り添うように考えられています。
越屋根のガラリは、その空気の流れを調整する大切な役割を担っています。
機械だけに頼らず、素材と構造の知恵で心地よさをつくる。
そんな建物の考え方が、このカフェの心地よさを静かに支えています。

